木内昇書「 光炎の人(上・下)」を読みました。
上下巻合わせて800ページ以上ある長編です。
IMG_20240409_123035以前読んだ「櫛挽道守」がとても良かったので、
( 「櫛挽道守」を読みました。 )
今回もまた同じような感動を期待していたのですが、
どちらも一つの事に打ち込む者たちの物語であっても
「光炎の人」は読後感がとても重く暗く、
「どうしてこうなってしまったのか・・・?」
と、現実の事のようにしばらく引きずってしまいました。

舞台は明治後期の徳島。貧しい農家育ちの音三郎は
12歳の時に家族のために工場で働き始めますが、
そこで目にした機械や電気の可能性に魅せられ、
独学で機械の構造を学んだり電気について調べたり
寝食を忘れてのめり込んでいきます。
彼の頭の中にあるのは常に機械や電気の事ばかり、
皆の生活が楽になるような製品を作りたい一心で
いつしか実家への仕送りも忘れて、少ない給金で
新製品の開発のための資材まで買うように・・・

近代化の波が押し寄せる中の職工の仕事は過酷で
骨身を削るようにして製品開発を続ける音三郎でしたが、
目指していた製品は大企業が先に商品化を果たしたり
何の後ろ盾もなく貧しい「一職工」の音三郎は、
どんなに努力しても叶えられる事のない夢の現実に
知らず知らずのうちに心身ともに疲弊していきます。

が、彼の技術者としての力を見込んで助力する者もあり
東京の軍の機関で開発に打ち込めるようになるのですが、
小学校すらまともに出ていない音三郎は学歴を詐称し
帝国大学卒の同僚ばかりの職場で彼らと渡り合う事に。
その時彼が目指していたものは「無線機」の開発で、
やがて満州の制圧を目論む関東軍の指示のもと
満州で無線機の開発を進める事になるのですが・・・

機械や電気に魅せられ真摯に努力を続けてきただけ、
ただただそれだけなのに、本人も気付かぬうちに
その道が歪められていく過程が本当に辛かったです。

幼馴染の利平は、残骸のようになった音三郎を見て
こんな風に思います。
「こんなに不器用なのによくぞここまでの出世を遂げた。
他人を欺くことも踏み台にすることも裏切ることも
出来ずに来たのではないか。
わずかな反目に多大な労力を使い、
密かに温めていた計画を他者に利用され、
それにも気付けず突き進んできたのではないか。
技術は自分を裏切らない、自分には確かな才がある、
いずれ人がやっていないような技術を確立してやる・・・
その思いだけでやみくもに走ってきたのではなかろうか。」
音三郎が純粋すぎるだけに音三郎のひたむきさが哀れで
こんな生き方のどこが悪い?音三郎の一体どこが悪い?
と泣けて泣けてしょうがなかったです。

心地よい感動とは違う暗く心揺さぶられる物語で
好みが分かれそうですが、読み応えがありました。




「一花ちゃん」ここまで出来ました。
IMG_20240409_141428この物語の感想を書きながらまた気持ちがぶり返し
「音三郎・・・なんでそうなった・・・」
と泣けて泣けて・・・
この物語はしばらく記憶に残りそうな気がします。




今日のリス友もポコチン君です。可愛い!
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