木内昇著「茗荷谷の猫」を読みました。

最近読んだ本は全て「何かに熱中する人」の話で
それぞれにストーリーは大きく違っていても、
主人公が常軌を逸して何かにのめり込むのは同じで
そう言う物語はどれを選んでも本当に面白いなあと
今回この本を読んでまたしみじみしました。
( 木内昇著「櫛引道守」を読みました。 )
( 木内昇著「球道恋々」を読みました。 )
( 木内昇著「光炎の人(上・下)を読みました。 )
この物語は、幕末から昭和にかけ、江戸/東京に生きた
名もなき人々の生き様を描いた短編集です。
植物が大好きで、遂には武士の身分を捨てて
植木職人になった男は、苦心の末に「染井吉野」を作り
末長く皆に愛される桜を作ることに成功するのですが、
名声や金に興味のない男は妻の複雑な思いもよそに
職人としての道を邁進するのでしたが・・・
皆を幸せにする「黒焼」の秘薬を作ると言う夢を掲げ
一人試作を続ける春造は、夢を人に語るたびに呆れられ
それでも秘薬の完成のために極貧に耐えながらも
黒焼を続けるのでしたが・・・
父からの遺産で茗荷谷に一軒家を買った男は、
贅沢をしなければ一生のんびり暮らして行けると判断して、
面倒な人付き合いを極力排除して生きる道を選ぶのですが
彼の言動が周りの人々の誤解をよんで、
静かなはずの彼の生活が思いもよらぬ方向へ・・・
いつかは自分で映画を作ると言う夢を掲げて、
街の映画館で働く「庄助さん」は、素直で邪気のない青年。
不器用なため仕事ぶりは褒められたものではないものの、
皆に愛されていた「庄助さん」ですが、
召集令状が来て彼も戦地へと赴くことに・・・
歴史に名を残す人々ではない普通の人々の話ですが、
一様に滑稽なほどのひたむきさや思い込みが
どれも究極の「涙」や「笑い」に変わる物語でした。
ちょっと不思議な感覚に陥る短編もありましたが、
身につまされる部分も多くあり、面白く読めました。
「リムル」人形、完成しました。
刀は割り箸で作ったのですが、ちょっと細すぎた?



この世界は出来ている・・・
人々の熱い願いや夢も多くの場合は叶わないまま。
でも、こんな物語を読むと「だから良いのだ!」
とも思えてくるし、これが自然なのだと思えます。
何かに夢中な人は往々にして滑稽なものかも知れず、
その滑稽さが実はその人の最大の魅力にもなり得て
面白いものですよね。



今日のリス友。
久しぶりのチビリスです。




